AI-OCRで日々の証憑仕分けコストを49万円から1万円に
ベンチャー支援税理士法人
- 業種
- 税務・会計に関する経営支援
2004年に設立されたベンチャー支援税理士法人は、起業段階から成長期の企業まで、税務・会計を中心とした経営支援を行っています。
そんな同社では、顧問先から届く通帳のコピーやクレジットカードの利用明細を、日付・金額・内容ごとに会計ソフトへ入力していく作業に、多くの時間を取られてきました。税理士事務所であれば、規模やお客様の業種を問わず発生している、地味だけれど手間のかかる業務です。
ご相談いただいたのは、この証憑処理をAIで効率化できないかということ。会計担当のKさん・Yさんが、ご自身で開発していたアプリを社内で実際に使える仕組みへと仕上げていきました。
今回は、通帳・クレジットカード明細をAIで読み取るOCRアプリについて、開発と実際の運用の視点から関わったKさん・Yさんのお二人にお話を伺いました。
プロジェクト概要
- 企業名
- ベンチャー支援税理士法人
- 会社概要
- 業種:税務・会計に関する経営支援
- ご支援内容
- 伴走支援
- ご支援期間
- 3か月(月1回・各3時間のセッション)
- ご支援前の状況
- プロジェクトのサマリ
- プロジェクト成果
-
月間の証憑処理コストの比較 ※約49万円/月・約1万円/月の概算値による比較。
税理士事務所なら"どこでも発生している"負担
Q. まず、今回の取り組みの背景を教えてください。
Kさん 顧問先の多くは、通帳のコピーやクレジットカードの利用明細を紙やPDFで送ってこられます。私たちはこれを一件ずつ確認しながら、日付・内容・金額を会計ソフトに入力していくのですが、件数が多いとかなりの時間がかかります。そこで会計ソフト付帯のAI-OCRサービスを利用しましたが、読み取り精度は高いものの、1仕訳あたりのコストがかさむのが悩みでした。
Q. Yさんも同じ業務に関わられていたのですか。
Yさん はい、私も月次の仕訳業務で同じように通帳・カード明細・領収書を扱っていて、会計ソフト付帯のサービスのコストの高さは同じように感じていました。顧問先から預かったデータを入力する作業自体はどの顧問先でも同じで、多くの社員がたくさんの時間を使って行っている基本の業務になるので、効率化のインパクトが大きいと考えていました。
システム開発内製化のボトルネック
Q. アプリ化を考えた最初のきっかけは何でしたか。
Kさん もともと社内の業務効率化の方針でシステムを内製していこうという話があり、それを押し進めるために結成されたのが、私たち2人からなる業務改善チームでした。そこで個人でGemini(生成AI)を使い、通帳・カード明細を読み取る仕組みを試作していました。ブラウザ上で動くデモのようなアプリまでは、自分でも作れていたんです。
Q. そこから先で、どんなところに壁を感じましたか。
Yさん 作ったアプリを、実際に社内で安全に使える形にするところです。データベースにきちんとつないだり、ユーザーごとに認証をかけたり、アプリをクラウドに安全な形で使えるようにしたりなど、、、当時、そのあたりの知識がなく、AIで業務を効率化できるということは分かっていたんですが、先に進められずにいました。そこでSaidaiさんからAI活用支援の話があり、検討を始めました。
Q. Saidaiに相談するうえで、重視していた点や決め手は何でしたか。
Kさん 私たちにとっての決め手は、社内運用の進め方を自分たちで考えながら一緒に整理していけることでした。これから業務改善を重ねていくためには、社外にシステムを外注するだけでは立ち行かないと考えていたので、我々自身がシステムを理解することが本質的な課題であると考え、この伴走支援という形を選びました。
Yさん 私も、実際の業務に即して一緒に検証しながら進められる点に期待していました。自分自身がシステムを理解することは一見遠回りに見えますが、長い目で見れば自分たちの手で改善し続けられるようになる方が、結局は早いと考えていました。
アプリで実装した証憑処理の内容
Q. 実際に作ったアプリについて教えてください。
Kさん 通帳・クレジットカード明細のPDFや画像をアップロードすると、AI(Gemini)が日付・金額・内容を読み取り、CSVとして出力するアプリです。出力したCSVは任意の会計ソフトに読み込ませ、後の処理に繋げることが出来ます。私は主に、このOCR処理と処理後のデータを人間が確認・修正できる機能を作っていました。AIの認識精度も完璧ではないので最後は人間が確認する必要があります。その時の確認のしやすさがこのアプリの利便性に直結すると考え、こだわったポイントです。
Q. Yさんは、このアプリにどう関わられましたか。
Yさん 私は主に、管理者用の画面を作りました。ユーザーごとに認証をかけた上で、誰がどれくらいアプリを使っているかが分かるようになっています。月間でどれくらい時間を削減できたか、コストがどう変わったかも確認でき、誰が何件・どれだけ入力したかも画面上で把握できます。
デモから現場で使える仕組みへ
Q. 実際に使ってみた様子はどうでしたか?
Yさん 自分たちが使うものを自作しただけあって使いやすいですね。必要な機能を考えて揃えられますし、不要な機能も一つもないんですよね。かゆいところに手が届く感じです。
Kさん 使用感については、まさにYさんの言うとおりで、使っていてストレスがないです。また、当初は読み取り精度が課題になるだろうと想定していましたが、杞憂でした。もちろん100%間違えないということはないので手直しも必要ですが、最新の画像認識モデルを使うことで、ほとんどの場合カバーできたので十分実際の業務で使えるレベルにできたなと思います。
Q. 開発していて難しかった点はどこでしたか?
Yさん データベース設計、ユーザー認証、セキュリティといった機能以外の運用面でした。AIを使って開発を進めていると、今や機能やデザイン自体はすぐに出来てしまいます。ですが安全に運用していくことを考えると、まだまだ足りてないところを認識しました。そこで各セッションで伴走者のYさんと、データの持ち方や認証の仕組み、APIキーの管理など、実際に運用するために必要な要素を一つずつ整理しました。クラウドに安全な形で公開し、社員それぞれに認証をかけて使えるようにする!というゴールを一緒に決めて進めてもらったので、運用まで3ヶ月という短い時間でできるようになったと思います。
Q. 現在の運用状況や効果を教えてください。
Kさん 現在は社内で運用し始めて1ヶ月ほどになります。我々はコストだったり、誰がどれだけ使っているか、といった利用状況を先ほど紹介した管理者画面から確認して、アプリを使っていない社員を見つけたら使うように指導しています笑
Yさん 運用が始まってからは、証憑の処理にかかる時間の感覚がかなり変わったと感じています。以前は、会計ソフトの帳票データ化サービスを使っていましたが、読み取り結果が返ってくるまでに待ち時間が発生することがありました。特に営業時間外だとすぐに結果が返ってこないため、そこで作業が止まってしまうことがありましたが、今はその待ち時間がなくなりました。
現在、証憑処理を行っている社員は全員このアプリを使っています。コストも、今月で見ると以前の50分の1ほどまで下がっていて、社内からもポジティブな声をもらっています。
ここまでスムーズに浸透した理由の一つは、画面のデザインをこれまで使っていたソフトに合わせて、見慣れたものに寄せて作ったことだと思います。新しいシステムに切り替える抵抗感が少なく、自然に使ってもらえたのかなと思います。
伴走支援を通じて現場から見えてきた「次の一歩」
Q. このアプリに取り組んでみて、AI伴走支援のどのような点がよかったですか。
Kさん 初回実施の際に運用上のセキュリティやAIを使って開発する際の注意点を説明してもらえたことです。大切なお客様の情報を扱っている以上、そこは懸念していた部分だったので、一から丁寧に説明してもらうことで、安全に運用するために何を考慮する必要があるのか、その考え方を理解することができました。
Yさん 私は完成品を渡されるのではなく、データベースや認証の仕組みも含めて、実際に運用することを前提に一緒に考えていけたのがよかったです。システムの仕組みを理解できたことで、自分たちでも開発を進められるようになり、他にも思い浮かんだアイデアを形にできるようになりました。
Q. 今後の取り組みについて教えてください。
Kさん このサービスをきっかけに社内でいろいろなアイデアが出るようになり、既に新しいプロジェクトが走り出しています。まずは今回のOCRアプリと同じ考え方で、他にも読み取りが必要な資料についてもアプリ化しています。
Yさん 私の方でも新しい取り組みを始めています。Saidaiさんと業務の棚卸しや取り組みテーマの相談をする中で、コスト削減や業務の自動化だけでなく、業務の品質向上にも取り組みたいという話になりました。そこで今は、社員によって品質にばらつきが出やすい業務について、AIを活用して一定の品質に近づけられないか取り組んでいます。
Q. 同じような課題を抱える税理士事務所へ、伝えたいことはありますか。
Kさん 今回のOCRのような仕組みは、決して特別なものではなく、どの事務所にとっても身近な課題だと思います。私たちの仕事は、専門性が高い分、どうしても業務が属人的になりやすいです。だからこそ、業務を一番理解している自分たち自身が、改善やアプリ開発に取り組むことに意味があると思います。
Yさん エンジニアでなくても、自分たちの業務を理解しているからこそ気づける改善点があるはずだと感じます。AIを使って、まずは小さく試してみることから始めてみるのがいいのではないかと思います。
まとめ
今回の取り組みでは、通帳・カード明細のデータ化という、税理士事務所であれば規模を問わず発生する定型業務を、実際に使える仕組みに変え、処理コストを約49万円から約1万円まで削減しました。SaidaiのAI伴走支援では、こうした現場の定型業務を題材にしながら、実際に使える仕組みを構想から運用までを一つずつ形にしていきます。
伴走支援担当からのひとこと
今回のお客様は税理士法人ということで、取り組んだテーマも税理士法人ならではの業務でしたが、同じような課題を抱えている事務所は多いのではないかと感じました。また、世の中にAIサービスが増えてきた一方で、便利だからこそ利用料が積み重なり、コスト面に課題を感じている企業も多いのではないかと思います。そうした中で、エンジニアでなくても、現場の業務をよく知る人が自分たちで仕組みづくりに取り組めるようになることは、コスト削減の面でも今後ますます重要になってくると感じています。
今回、お客様にとって大きな価値になったと感じているのは、アプリを「現場で実運用できる状態」までサポートできたところです。「そこは自分たちだけではできなかった!」という言葉を直接いただいたときに、伴走という形で支援する意義を改めて感じました。AIを使ってデモを作れる方は増えていますが、それを現場で安全に運用できる状態まで持っていくには、大きな壁があると思います。そこを一緒に整理し、一つずつ形にしていくことが、私たちの伴走支援の大きな価値だと考えています。
現場の課題に合う進め方を、一緒に考えます。
「何から始めればいいかわからない」という段階からのご相談も歓迎です。貴社の状況を伺い、研修・開発・伴走のどこから始めるのが最適かをご提案します。